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杉本博司による可視光線
スペクトルのプリズム実験

 

 


分野を超え活躍する日本人アーティスト杉本博司。300年以上もの昔、アイザック・ニュートンがプリズム実験に用いたその同じメソードに導かれ、既に生産中止となったポラロイドフィルムの上で彼が追い求め、再構築するのは、人間の目で見ることのできる光の領域を超えた色彩の場だ。そこに現れたのは、杉本が光を絵の具として用いて描いた絵画 - とでも言おうか、とても神秘的な階調だった。

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Hiroshi Sugimoto, Opticks 069, 2018 Chromogenic print | Courtesy of the artist and Marian Goodman Gallery Copyright: Hiroshi Sugimoto

 

現代アーティスト、杉本博司の作品を定義することは容易いことではない。しかし、その普遍性は、過去から未来へと流れる時間という概念に貫かれた、人間の原点を追求する彼の態度の中に見出すことができる。その過激なまでの伝統主義は、仏教から石器時代の土器などの出土品のコレクション、隕石の収集にも及ぶ、深い歴史探究に通じる。しかし、最も多くの人が知る杉本作品は、北極海から黒海までの静謐な水平線をとらえた、独特なモノクローム写真のシリーズ「海景 SEASCAPES」だろう。今回の新シリーズ「OPTICKS」では、300年前のプリズムの実験を現代の文脈に置き直し、深考した。



 

Hiroshi Sugimoto, Opticks 032, 2018 Chromogenic print | Courtesy of the artist and Marian Goodman Gallery Copyright: Hiroshi Sugimoto

 

「世界は無限の色に満ちているのに、自然科学は世界を7色にしてしまう。しかし私は捨象されてしまった色の間でこそ世界を実感することができるような気がするのだ。」と杉本は言う。

15年以上、このような視覚的探究を進める中で、杉本はイギリスの物理学者・数学者アイザック・ニュートン卿のプリズム実験から着想を得て、光の解釈を捉え直す写真作品のシリーズを発表した。1704年に、白色であると思われていた太陽光がプリズムによって、赤、黄、青などの複数の色から構成されていることを発見したニュートン。そこから杉本は独自に現代技術を駆使し、複雑でテクニカル、重層的なプロセスを通して色域を再構築してみせた。

 

Hiroshi Sugimoto, Opticks 094, 2018 Chromogenic print | Courtesy of the artist and Marian Goodman Gallery Copyright: Hiroshi Sugimoto

 

ポラロイド690SLRカメラと、2008年のポラロイド社廃業直前に入手した最後のフィルムロットで撮影した作品には、色と色の間に現れる絶え間ないグラデーションとその断片が捉えられている。杉本は言う -「私はその色の階調の奥深さに圧倒される。光の粒子が見えるような気さえするのだ。そしてその一粒一粒の粒子が微妙に違う色を映している。赤から黄、黄から緑、そして緑から青へと無限の階調を含んで刻々と変化していく。私は色に包まれる。特に色が闇に溶け込む時、その階調は神秘へと溶け込んでいくようだ。」
 

Hiroshi Sugimoto, Opticks 092, 2018 Chromogenic print | Courtesy of the artist and Marian Goodman Gallery Copyright: Hiroshi Sugimoto


 

Hiroshi Sugimoto, Opticks 151, 2018 Chromogenic print | Courtesy of the artist and Marian Goodman Gallery Copyright: Hiroshi Sugimoto

 

この圧倒的な作品群は、まさに人類の18世紀から21世紀まで時代の変化を表現している。現代的なツールを使いながら、本作を真にユニークなものとしているのは、杉本の徹底したリサーチへのこだわりだ。杉本はニュートンが18世紀に発明した観察装置を忠実に再現し、ニュートンと同じ色調で太陽光を分散させ、撮影した。杉本が「光を私の絵の具にした」と説明するように、その写真はまさに絵画のようだ。
 


 

Hiroshi Sugimoto, Opticks 115, 2018 Chromogenic print | Courtesy of the artist and Marian Goodman Gallery Copyright: Hiroshi Sugimoto
 

色と色が溶け合う瞬間、それらは無限の暗闇へと融合していく。「私はポラロイドの小さな画面の中にも、その微細な粒子が閉じ込められているであろうことに気がついた。数年にわたる実験の結果、私自身が色の中に溶け込むことができるような十分な大きさを持った色画を作ることに成功した。私は光を絵の具として使った新しい絵(ペインティング)を描くことができたように思える。」
 

Hiroshi Sugimoto, Opticks 124, 2018 Chromogenic print | Courtesy of the artist and Marian Goodman Gallery Copyright: Hiroshi Sugimoto


 

Text: Joanna Kawecki

Images: Courtesy Marian Goodman Gallery

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